中小企業の生成AI導入がつまずく3つの理由と、定着させる手順
著者:AIみちしるべ編集部(株式会社SANVIA) ・ 公開日: ・ 更新日:
中小企業の生成AI導入がつまずく主な理由は、導入前は「具体的な活用場面が不明」、検討段階では「推進する人材がいない」、導入後は「社内ルール・方針の整備が追い付かない」ことで、段階ごとに壁が違います。つまずかないためには、活用する業務を1つに絞り、担当者を決め、最低限のルールを先に作ってから小さく試す順番が有効です。
生成AIの活用は、どのくらい進んでいるのか
調査から、現状を確認します。
東京商工リサーチの調査(2025年7月30日〜8月6日、有効回答6,645社)では、生成AIの活用を推進している企業は25.2%でした。内訳は、中小企業が23.4%、大企業が43.3%です。
大同生命のサーベイ(2026年1月)では、生成AIを「活用したことがない(現在は活用していないを含む)」企業が60%以上でした。活用している業務は「文書・資料作成」が71%で最多です。
これらは調査時期も対象も異なる数字なので、単純に比べることはできません。ただ、まだ多くの企業が活用の途上にあること、使われている中心は文書・資料作成であることは、共通して読み取れます。
理由1:何に使うかが決まっていない(導入前)
商工中金の調査(2026年3月)では、導入前の段階で最も多い課題は「具体的な活用場面が不明」でした。
ツールを先に決めてしまうと、「契約したが何に使うのかわからない」状態になりがちです。対処は、ツールの前に業務を決めることです。
業務の選び方(チェック表)
| 確認項目 | 向いている | 向いていない |
|---|---|---|
| 頻度 | 週に何度も発生する | 年に数回 |
| 内容 | 文章の作成・要約・整理が中心 | 正確な計算や最新の事実確認が中心 |
| 正解 | ある程度の型がある | 毎回、判断が大きく変わる |
| 確認 | 人が最終確認しやすい | 確認が難しい、影響が大きい |
業務の候補は、業務別・生成AIの活用アイデア集から探せます。見積書、議事録、問い合わせの返信案などが、取り組みやすい例です。
理由2:推進する人がいない(検討段階)
東京商工リサーチの調査では、活用を推進しない理由として「推進するための専門人材がいない」が55.1%で最多でした。「活用する利点、欠点を評価できない」が43.8%で続きます。商工中金の調査でも、検討段階の最多は「導入を推進する人材がいない」でした。
ここで注意したいのは、「専門人材」が必ずしもAIの専門家を意味するとは限らないことです。調査の選択肢の詳細は各調査で確認が必要ですが、実務で必要なのは、次の役割を果たす人です。
- 試す業務を決め、期間を区切る人
- 使った結果(作業時間、品質)を記録する人
- 困ったときの相談先になる人
この役割は、関心のある担当者1名から始められます。専門家に頼るのは、そのうえで判断が難しい部分に絞るという考え方もあります。
理由3:ルールが後回しになる(導入後)
商工中金の調査で、導入後に最も多い課題は「社内ルール・方針整備が追い付かない」でした。使い始めてから、「顧客情報を入力してよいのか」「誰が出力を確認するのか」が問題になります。
最低限のルールは、使い始める前に決められます。
- 使ってよいツールと、設定
- 入力してはいけない情報
- 出力を確認する人
- 困ったときの相談先
項目の詳細は社内AI利用ルールの作り方に、ChatGPTを使う場合の学習設定はChatGPTの情報漏洩対策にあります。
つまずかないための6つの手順
上の3つの壁に対応した手順です。
- 業務を1つに絞る:上のチェック表で、頻度が高く、確認しやすい業務を選ぶ
- 導入前の状態を記録する:1件あたりの作業時間と、困っている点をメモする
- 担当者を1名決める:試す期間と、報告のタイミングも決める
- 最低限のルールを決める:A4一枚程度でよい
- 2〜4週間試して、測る:作業時間と、修正が必要だった点を記録する
- うまくいった型を文書化し、横展開する:指示文と確認手順を共有する
全体の進め方は、AI導入で最初にやるべき5つのステップで詳しく解説しています。
導入前の自己チェック表
自社の状態を確認するための表です。「いいえ」が多い項目が、最初に手を付ける部分です。
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 最初に試す業務を1つ言える | [ ] | [ ] |
| 導入前の作業時間を記録している | [ ] | [ ] |
| 試す担当者が決まっている | [ ] | [ ] |
| 入力してはいけない情報を決めている | [ ] | [ ] |
| 出力を確認する人が決まっている | [ ] | [ ] |
| 試す期間と、続けるか判断する基準を決めている | [ ] | [ ] |
自社の準備度を短時間で確認したい場合は、AI導入診断(全8問・約3分)が使えます。
費用と人材の面でつまずくときの選択肢
人材の不足は、調査でも大きな理由として挙がっています。その場合の選択肢として、公的な制度があります。ツールの導入費用はデジタル化・AI導入補助金2026、社員の研修費用は生成AI研修への人材開発支援助成金で整理しています。いずれも対象や要件、期限が定められているため、公式情報で確認してください。
調査結果の読み方で注意すること
調査の数字は、自社の判断の材料になりますが、そのまま自社に当てはまるとは限りません。
- 調査ごとに、対象企業の規模や業種、調査時期が異なる
- 「活用」の範囲(個人の試用を含むか)が、調査ごとに異なる可能性がある
- 数字が高い・低いこと自体は、導入すべきかどうかの答えにならない
大切なのは、自社の業務で効果があるかを、小さく試して確かめることです。
よくある質問
Q. 中小企業で生成AIを活用している企業はどのくらいですか?
東京商工リサーチの調査(2025年7月30日〜8月6日、有効回答6,645社)では、活用を推進している企業は全体で25.2%、中小企業は23.4%、大企業は43.3%でした。大同生命のサーベイ(2026年1月)では、活用したことがない企業が60%以上です。調査によって対象と調べ方が異なります。
Q. 導入がうまくいかない一番の原因は何ですか?
段階によって異なります。商工中金の調査(2026年3月)では、導入前は「具体的な活用場面が不明」、検討段階は「導入を推進する人材がいない」、導入後は「社内ルール・方針整備が追い付かない」がそれぞれ最多でした。
Q. AIの専門人材がいないと導入できませんか?
専門人材がいない点は、東京商工リサーチの調査でも、推進しない理由の最多(55.1%)です。ただ、最初の一歩は、関心のある担当者1名が、1つの業務で試すところから始められます。判断が難しい部分は、外部の専門家に相談する方法もあります。
Q. 最初はどの業務に使うのがよいですか?
頻度が高く、正解がある程度決まっていて、人が最終確認しやすい業務が向いています。大同生命のサーベイでは、活用している業務は「文書・資料作成」が71%で最多でした。見積書のたたき台や議事録などが、取り組みやすい例です。
参考にした公式情報
本記事は、2026年10月15日時点で確認できた各調査の公表内容に基づきます。最新情報は各公式サイトで確認してください。
自社の場合どうなるか整理したい方へ
自社がどの段階でつまずきそうか、最初にどの業務を選ぶかを整理したい方は、30分の無料相談で一緒に確認できます。
関連記事
ChatGPTで見積書のたたき台を作る方法|プロンプトと提出前チェック表
見積書のたたき台をChatGPTで作る手順を、そのまま使えるプロンプト2種と提出前チェック表付きで解説。AIに任せる部分と人が決める部分を分けます。
2026-10-15ChatGPTの情報漏洩対策:学習オフの設定手順とプラン別の違い
ChatGPTの学習オフ設定の手順、Free/Plusと Business/Enterprise/Edu・APIの初期設定の違い、メモリやGPTsの注意点、社内チェックリストをまとめました。
2026-10-15デジタル化・AI導入補助金2026の締切・補助率・申請の流れ【6次・7次】
旧IT導入補助金のデジタル化・AI導入補助金2026について、6次(10/30)・7次(12/1)締切、通常枠の補助額と補助率、申請の流れを公式情報でまとめました。