2026-10-15

中小企業の生成AI導入がつまずく3つの理由と、定着させる手順

著者:AIみちしるべ編集部(株式会社SANVIA) ・ 公開日: ・ 更新日:

中小企業の生成AI導入がつまずく主な理由は、導入前は「具体的な活用場面が不明」、検討段階では「推進する人材がいない」、導入後は「社内ルール・方針の整備が追い付かない」ことで、段階ごとに壁が違います。つまずかないためには、活用する業務を1つに絞り、担当者を決め、最低限のルールを先に作ってから小さく試す順番が有効です。

導入段階ごとの最も多い課題。導入前は具体的な活用場面が不明、検討段階は導入を推進する人材がいない、導入後は社内ルール・方針整備が追い付かない
段階ごとに最も多い課題が違う。出典: 商工中金(2026年3月調査)

生成AIの活用は、どのくらい進んでいるのか

調査から、現状を確認します。

東京商工リサーチの調査(2025年7月30日〜8月6日、有効回答6,645社)では、生成AIの活用を推進している企業は25.2%でした。内訳は、中小企業が23.4%、大企業が43.3%です。

大同生命のサーベイ(2026年1月)では、生成AIを「活用したことがない(現在は活用していないを含む)」企業が60%以上でした。活用している業務は「文書・資料作成」が71%で最多です。

これらは調査時期も対象も異なる数字なので、単純に比べることはできません。ただ、まだ多くの企業が活用の途上にあること、使われている中心は文書・資料作成であることは、共通して読み取れます。

生成AIの活用状況の棒グラフ。活用を推進している企業は全体25.2%、中小企業23.4%、大企業43.3%。活用している業務は文書・資料作成が71%で最多
生成AIの活用状況(0〜100%)。2つの調査は時期・対象が異なるため単純比較はできない。出典: 東京商工リサーチ、大同生命サーベイ(2026年1月)

理由1:何に使うかが決まっていない(導入前)

商工中金の調査(2026年3月)では、導入前の段階で最も多い課題は「具体的な活用場面が不明」でした。

ツールを先に決めてしまうと、「契約したが何に使うのかわからない」状態になりがちです。対処は、ツールの前に業務を決めることです。

業務の選び方(チェック表)

確認項目 向いている 向いていない
頻度 週に何度も発生する 年に数回
内容 文章の作成・要約・整理が中心 正確な計算や最新の事実確認が中心
正解 ある程度の型がある 毎回、判断が大きく変わる
確認 人が最終確認しやすい 確認が難しい、影響が大きい

業務の候補は、業務別・生成AIの活用アイデア集から探せます。見積書、議事録、問い合わせの返信案などが、取り組みやすい例です。

理由2:推進する人がいない(検討段階)

東京商工リサーチの調査では、活用を推進しない理由として「推進するための専門人材がいない」が55.1%で最多でした。「活用する利点、欠点を評価できない」が43.8%で続きます。商工中金の調査でも、検討段階の最多は「導入を推進する人材がいない」でした。

活用を推進しない理由の棒グラフ。推進するための専門人材がいないが55.1%、活用する利点、欠点を評価できないが43.8%
生成AIの活用を推進しない理由(0〜100%)。出典: 東京商工リサーチ

ここで注意したいのは、「専門人材」が必ずしもAIの専門家を意味するとは限らないことです。調査の選択肢の詳細は各調査で確認が必要ですが、実務で必要なのは、次の役割を果たす人です。

この役割は、関心のある担当者1名から始められます。専門家に頼るのは、そのうえで判断が難しい部分に絞るという考え方もあります。

理由3:ルールが後回しになる(導入後)

商工中金の調査で、導入後に最も多い課題は「社内ルール・方針整備が追い付かない」でした。使い始めてから、「顧客情報を入力してよいのか」「誰が出力を確認するのか」が問題になります。

最低限のルールは、使い始める前に決められます。

項目の詳細は社内AI利用ルールの作り方に、ChatGPTを使う場合の学習設定はChatGPTの情報漏洩対策にあります。

つまずかないための6つの手順

上の3つの壁に対応した手順です。

  1. 業務を1つに絞る:上のチェック表で、頻度が高く、確認しやすい業務を選ぶ
  2. 導入前の状態を記録する:1件あたりの作業時間と、困っている点をメモする
  3. 担当者を1名決める:試す期間と、報告のタイミングも決める
  4. 最低限のルールを決める:A4一枚程度でよい
  5. 2〜4週間試して、測る:作業時間と、修正が必要だった点を記録する
  6. うまくいった型を文書化し、横展開する:指示文と確認手順を共有する

全体の進め方は、AI導入で最初にやるべき5つのステップで詳しく解説しています。

導入前の自己チェック表

自社の状態を確認するための表です。「いいえ」が多い項目が、最初に手を付ける部分です。

質問 はい いいえ
最初に試す業務を1つ言える [ ] [ ]
導入前の作業時間を記録している [ ] [ ]
試す担当者が決まっている [ ] [ ]
入力してはいけない情報を決めている [ ] [ ]
出力を確認する人が決まっている [ ] [ ]
試す期間と、続けるか判断する基準を決めている [ ] [ ]

自社の準備度を短時間で確認したい場合は、AI導入診断(全8問・約3分)が使えます。

費用と人材の面でつまずくときの選択肢

人材の不足は、調査でも大きな理由として挙がっています。その場合の選択肢として、公的な制度があります。ツールの導入費用はデジタル化・AI導入補助金2026、社員の研修費用は生成AI研修への人材開発支援助成金で整理しています。いずれも対象や要件、期限が定められているため、公式情報で確認してください。

調査結果の読み方で注意すること

調査の数字は、自社の判断の材料になりますが、そのまま自社に当てはまるとは限りません。

大切なのは、自社の業務で効果があるかを、小さく試して確かめることです。

よくある質問

Q. 中小企業で生成AIを活用している企業はどのくらいですか?

東京商工リサーチの調査(2025年7月30日〜8月6日、有効回答6,645社)では、活用を推進している企業は全体で25.2%、中小企業は23.4%、大企業は43.3%でした。大同生命のサーベイ(2026年1月)では、活用したことがない企業が60%以上です。調査によって対象と調べ方が異なります。

Q. 導入がうまくいかない一番の原因は何ですか?

段階によって異なります。商工中金の調査(2026年3月)では、導入前は「具体的な活用場面が不明」、検討段階は「導入を推進する人材がいない」、導入後は「社内ルール・方針整備が追い付かない」がそれぞれ最多でした。

Q. AIの専門人材がいないと導入できませんか?

専門人材がいない点は、東京商工リサーチの調査でも、推進しない理由の最多(55.1%)です。ただ、最初の一歩は、関心のある担当者1名が、1つの業務で試すところから始められます。判断が難しい部分は、外部の専門家に相談する方法もあります。

Q. 最初はどの業務に使うのがよいですか?

頻度が高く、正解がある程度決まっていて、人が最終確認しやすい業務が向いています。大同生命のサーベイでは、活用している業務は「文書・資料作成」が71%で最多でした。見積書のたたき台や議事録などが、取り組みやすい例です。

参考にした公式情報

本記事は、2026年10月15日時点で確認できた各調査の公表内容に基づきます。最新情報は各公式サイトで確認してください。

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